企業家の肖像

HOME > 企業家の肖像 > 第2回 株式会社オージーケーカブト 代表取締役社長 木村 秀仁

"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

第2回目は、東大阪市に本社を置き「品質」と「心質」を掲げ、オートバイ、自転車、スポーツ用ヘルメットの企画・製造・販売を展開する株式会社オージーケーカブトの木村秀仁社長にお話しをお伺いしました。

第2回 株式会社オージーケーカブト 代表取締役社長 木村 秀仁

〒577-0016
大阪府東大阪市長田西6-3-4
http://www.ogkhelmet.com/

Q、現在の事業を始めたきっかけを教えてください。

木村) バイクのヘルメットは約30年前に始めました。ミニバイクが大流行した時代です。 テレビで盛んにCMが流れていました。しかし、当時私は自動車用品の事業に取り組むことを検討しアメリカの視察にも行きました。
現在のオートバックスも、まだオートバックスという名前で商売をしていませんでした。 自動車用品の事はよくわかりませんでしたが、日本国内では、当時、法律で三角停止板が義務付けされました。
そこで、私が当時勤めていました現在のオージーケーカブトを分社する前のオージーケー技研の社長に、 是非この三角停止板の製造販売をやらせて欲しいと直訴しました。
法律での義務付けということもあり、これはよく売れました。このことである程度自動車業界、用品のことは理解できました。 28歳の時の話です。
そして、アメリカ視察では、アメリカ人にとって「車は足」という現実を知りました。余計なアクセサリーや用品は必要が無いという発想でした。 このことにより、自動車用品についての将来性はあまり明るくはないと、当時私は判断しました。 そんな時でした。
テレビでミニバイクのCMが盛んに流されているのを見て、"これだ"と思いました。 「このバイクは、自転車に代わって爆発的に売れるだろう。だから、このミニバイクのヘルメットを作って売れば必ず儲かる。」と考えました。
当然、ミニバイクにも将来ヘルメットの着用が義務付けられると読んでいました。

石) しかし、その後自動車用品は、オートバックス等の業態の登場で、爆発的に伸びましたが、これは運命ですね。

木村) 自転車用のヘルメットは、今は亡きオージーケー技研の会長が始めました。
通学用の簡単なものがスタートです。現在のロードレーサー用の様なスポーティーなデザインのものはありませんでした。
基本的に自転車レースに出場するのにもヘルメットを被る習慣がありませんでしたので。
従って、現在当社の主力商品の一つであるスポーツタイプのヘルメットは、売るためというよりも、品揃えの一環としてスタートしたのが真実です。
日本における自転車用ヘルメットのトップメーカーとして、自転車用のヘルメットについては全ての商品を揃えるという理念に基づいてのことでした。

石) 当初は、随分営業でご苦労されたのでは?

木村) 問屋を通しての営業でしたが、商売としては成立するには随分時間がかかりました。

Q、現在の商品の特徴を教えて下さい。

木村) バイク用ですが、スポーツタイプのフルフェイス型、スクーターに代表されるホビー的なもの、ミニバイク向けのファミリータイプと、大きく分けて3つのタイプのものがあります。
当社の場合、国内においてはホビー、ファミリータイプの商品が主力となっています。

石) 主力商品であるホビータイプの商品コンセプトを教えて下さい。

木村) ヘルメットは本来、"万が一"の事を考えて安全のために被るものです。
そして、万が一は少ないに越したことはありません。また、その万が一の発生確立は非常に少ないのも現実です。
従って、非常に少ない確率のために、必要以上に窮屈な思いをするよりも、ユーザーの方には、もっと着装感やファッション性を楽しんでほしい。
当社におけるホビーヘルメットは、"被るものから着るものへ"という発想で商品開発に取り組んでいます。

石) ホビーとファミリーで年間何個くらい販売しているのですか?

木村) 日本全体では年間200~210万個が販売されていますが、当社の販売個数はおおよそ30万個です。

石) 自転車用ヘルメットの商品コンセプトを教えて下さい。

木村) 自転車用の場合は、当社の場合、ロードレーサー用等のスポーツタイプのもの、幼児・学童対象の子供用の2つのタイプに大別出来ます。
この2つは同じ自転車用のものですが、全くコンセプトは異なります。
子供用に関しては、未発達である子供の頭を守ることを最優先に、安全性能と快適性の両立で考えていますが、大人用であるスポーツタイプのものは、いわゆるプロ仕様にこだわっています。
子供用と違った次元での軽量化、着想感、安全性能の実現を目指しています。また、自転車レースには転倒は付き物です。レースになると、時速70キロのスピードで走ります。
従って、軽量化、装着感と安全性能の両立については、ユーザーからの非常に厳しい要求にも応えなければなりませんので、大変です。

石) プロ仕様のタイプでは、向うところ国内では敵なしでは?

木村) そうですね。現状では、主に競合するのは海外メーカーのものです。
但し海外製のものは、欧米人の頭の形に合わせて作られています。東洋人の頭の形に完全にはフィットしないのが現実です。
従って海外製のものと、東洋人の頭の形に合わせて作っている当社のものを被り比べていただくと、その装着感の違いは一目瞭然となります。

石) スポーツタイプと子供用の国内販売シェアはどのような状況ですか?

木村)スポーツタイプは年間4~5万個販売しています。このタイプの国内マーケットは小さく、これでも国内市場の約55%のシェアを占めています。
子供用は、国内市場の約60%のシェアを占めています。

Q、オージーケーカブトの経営理念を教えて下さい。

木村) これは自分で創った言葉なのですが、経営には品質と"心質"があります。
良い心の質から本当の品質が生まれる。これが、私が大切にしている考え方です。
商品を作る場合は、絶えず心の質を高めながら、本当の品質を追い求める姿勢が大切なのです。
後は、"お客様に嘘をつかない"商品作りです。
ヘルメットも安価なものから高価なものまで様々あります。それぞれの商品価格に見合った適正な品質や安心感をお客様にお届けすることはとても大切なことです。

Q、やはり企業は"人"が命だと思いますが、木村社長が社員に求める"姿勢"や"心構え"を教えて下さい。

木村) これは常々言っていることですが、"より楽しくあれ"ということです。
現実的には、1日24時間の中で、通勤時間も含めると会社に居る時間が一番長いのです。
一番長い時間居る場所なのだから、その時間は楽しく過ごして欲しいと考えています。
また、当社はアウトドアで使用するホビー的な商品を作る会社です。
人の心を楽しませる発想や精神が必要です。
それには、まず作っている自分の職場が楽しくないと、本当にお客様を楽しませる商品は作ることができません。

石) 仕事が楽しくなるような職場づくりを心掛けているわけですね。

木村) 自分の職場を楽しくする精神を持った社員であって欲しいと思います。
また、そのためには、まず自分が働いている会社に誇りを持つことが出来るのかということが重要になります。
これは経営者である私が常々目標にしていることでもあります。
先ほど言いました、"お客様に嘘を付かない"ということや"心質"が大切であるということも、全ては、そこからのスタートではないでしょうか。
このことは理想と言われても仕方ありませんが、私は心の底からそう考えています。
自分の会社のあるべき理想を掲げることが出来るということが大切なのです。
まあ、振り返ってみると、少人数の時は良かったのですが、社員の人数が増えてきた今日では、理想と現実の間で悩む毎日の連続です。(笑)

Q、社員の皆様が元気にはつらつと仕事をすることが出来るために、何か会社として特別に実施していることはありますか?

木村) 現在、具体的に何かをしているということはありませんが、昔と違い今はパソコンで何でも管理している時代です。
当社も様々な報告はパソコンを通じてしています。
私は、基本的に全社員の報告に目を通すようにしています。また、一定の役職者以上の報告に関しては、よりきめ細かく対応しています。

石) 全ての報告に対して、返信されているのですか?

木村) 返信の必要のないものにはしませんが、疑問に感じたことや質問があれば、必ず返信します。 その上で、まだクリアにならない場合は、直接会って話をします。たとえメールであったとしても、社員と接触する時間は意識して大切にしています。

Q、逆に社員の皆様から木村社長に対するリクエストがあるとすれば、どのようなことが考えられますか?

木村) 事業の拡大傾向を受けて社員の人数が増えてきた結果、私が目指している"より楽しい職場"というものから、 セクションよっては少し社員同士の摩擦も生じている現実があるので、何とか改善できないのかといった声 を最近よく耳にします。
このあたりの問題は、私自身が率先して、本来の当社のあるべき姿に改善するように努めています。

石) そうなると社長と社員の間に位置する、幹部社員の役割は重要です。
会社、社長の考え方を、正しくパート、アルバイトに至るまでに浸透させなければなりません。

木村) その通りです。
日々の会社の業績に対して責任のある幹部社員の苦労はよく理解しているつもりです。
しかし、どうしても目先の仕事に追われると、部下の社員の精神的な部分には無関心になってしまいます。
もう少し精神的に余裕を持って、部下の育成、指導をしてもらえると、もっと良い職場になると思うのですが・・・。
このあたりも、理想と現実に悩む今日この頃です。(笑)
また、これは私の夢で社員も願っていることと思うのですが、同規模同業種同地域で一番給料の高い会社に成りたいと願っています。

Q、10年後のオージーケーカブトの姿をどのようにイメージしていますか?

木村) 売上の数字には、そう拘ってはいませんが、社員の在籍年数、年齢が上がれば、その分給料が上がるのが自然な姿と考えています。
そして、その実現のためには、一定の利益を上げ続ける必要はあります。それは当然のことです。 しかし、何が何でも売上優先という考え方は持っていません。
私が一番大切にしたいのは、オージーケーカブトの"ブランド"です。
ブランドとういものは、お客様との約束なのです。
「オージーケーカブトの商品は安心して買うことができる」言われるメーカーであり続けたい。
そのため、現在、当社は品質管理を最重要課題として取り組んでいます。 当社も今日に至るまでは、"売るため"の体制になっていた面も否定出来ません。 現在から10年後にかけては、品質管理能力の向上を主体とした体制に体質を転換していく必要があります。

石) 信頼されるブランド、お客様の期待を裏切らないブランドを目指されているわけですね。

木村) その通りです。
その実現の結果としての、売上であり利益であらなければなりません。

石) この考え方は社員の皆様も共有して欲しいですね。

木村) そうです。
この考え方は折に触れて話はしています。 また、新入社員の面接に私は全て立会いますが、その場でもこの考え方は必ず説明しています。
この理念に賛同してくれた社員が入社し、今の会社を支えてくれていますが、 5年後、10年後にはもっとこの理念を素晴らしい形で実現してくれると信じています。

Q、木村社長の尊敬する人物、座右の銘があれば教えて下さい。

木村)座右の銘は"七転び八起き"です。
これは、私の人生そのものの言葉です。(笑)
今日に至るまでは、正にジェットコースターのような人生でした。30代の若い時期に非常に良い時代を経験し、 天狗になった時期もありました。それが一転バブルの崩壊で、もう少しで倒産しそうなくらいに追い込まれた経験もあります。
尊敬するというより、好きな人物としては、故本田宗一郎さんです。
本田さんのものづくりに対する妥協を許さない姿勢には大いに共感します。

Q、木村社長の人生の夢や目標をお聞かせ下さい。

木村) 簡単ですが、より楽しく人生を過ごすことです。
会社がより楽しい場所になれば、私もより楽しくなれると思っています。 仕事、家族、友人関係の全てが、「今日も楽しかった。明日も楽しくありたい。」と思えるような人生を過ごしたい。
そのために、色々なことを努力していると言ってもよいと思います。

Q、最後に、木村社長にとって経営とは一言で言って何でしょうか?

木村) ありきたりですが、やはり"人"です。

石) 人を育てるということでしょうか?

木村) 全てです。
自分自身も人として人に育てられて来ました。
そして、人間として成長し、人の上に立って人を育て引っ張って行く気持ちがないと、 経営者として、よい経営は出来ないと思っています。
お金儲けが全てではないのです。
また、社員の人間として成長を願う前に、まず経営者の自分が人間として成長する必要があります。 自分はそんなに素晴らしい人間ではありませんが、少なくともそのように考えることで、そのために 自分で努力できることを、一つでも二つでも実行することが大切だと思っています。

本日は貴重なお話し誠にありがとうございました。

一覧へ戻る

ページの先頭へ戻る