企業家の肖像

HOME > 企業家の肖像 > 第10回 徳本砕石工業株式会社 常務取締役 徳本 浩

"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

本日は、奈良の吉野で砕石事業ならびに生コン事業を経営している徳本砕石工業株式会社の徳本常務にお話を伺います。
徳本常務は、自社砕石を使った地盤改良事業を新規事業責任者として積極的に推進している若き事業家です。彼の熱い思いに迫ってみたいと思います。

第10回 徳本砕石工業株式会社 常務取締役 徳本 浩

〒638-0801
奈良県吉野郡大淀町芦原531-6
http://www.tokumoto-g.com/

石)今日は、どうもありがとうございます。今日は徳本常務から色々お話を伺いたいのでよろしくお願いします。トクモトグループは砕石事業を基軸にして、生コン事業、土木事業と奈良県では、優良企業として確たる地位を築かれています。しかしながら、大学卒業後、広告代理店に入社されましたよね。全くの異業種ですよね。その理由をお聞かせ願えませんか。

徳本)小さい頃から、いずれこの会社を引き継ぐであろうという意識は割と強い方だったと思います。というのも自分の住んでいる家の目の前が砕石場で、しかも、大きい重機がバンバン行きかうような場所で育ったので、男臭い業種に対して憧れを持っていました。それに、自分が引き継いでいくであろうなって周りからも言われましたし、そういう意識は強かったんです。

石)普通はゼネコンに就職しますよね。

徳本)正直学生時代は、そこまで考えていなかったのですが、自分の進む道を考えている時に、たまたま広告代理店の企業説明会にお邪魔するきっかけがありました。当時、広告代理業という仕事に対しては知識もまったくなかったのですが、ただ、まだやりかけて数年で、凄い伸び率でそろそろ上場の準備までしているような会社で、自分がいずれ会社を引き継ぐにあたって、そういう場所で自分が仕事をさせてもらえれば、色んないい経験をさせてもらえるんじゃないかなと。

石)成長企業に魅力を感じたということですね。

徳本)業種にこだわらず、"成長"というものに関心がありましたね。

石)でも社業を継ぐというのは決めていたということですね。

徳本)そうです。外で勉強するっていうことが自分自身にとって後々生きるんじゃないかなって。
で、入社して1年半で上場しました。すごくいい経験をさせて頂きましたし、今でも勤めさせていただいた会社にはとても感謝しています。

石)次に、砕石生コン製造販売事業の業界の現状、これからの方向性、読み、流れについて、教えて頂きたいんですけど。

徳本)どうしても建設関連の業種ですので、明らかに先の見通しは暗い、衰退していくのは間違いないと考えています。高度成長期を終えた今の日本で、しかも飽和状態の建設関連。そして高齢化社会が進むこの先、建設業界が膨れることはまずない。ピークで80兆円あった建設投資額が今や40兆円で、ピークの時から比べると半分以下の状況になっています。同業者の数(特に砕石業者)も最盛期の半分以下から3分の1という状況です。しかし、建設産業自体はなくならないので、今この厳しい状況を乗り越えられれば先々残ったときにオンリーワンになれると考えています。

石)次に、徳本常務が直接担当されている、地盤改良事業について説明していただけますか。

徳本)そうですね、従来、地盤の弱い軟弱な地盤に対して、住宅等を建てる際に代表的な地盤改良、地盤補強の工法として、セメントで地盤を固める工法が一般的なのです。
しかし、10数年前にセメントを一切使用せず、天然の砕石のみを使用した地盤改良の工法が開発され、弊社としては昨年から、施工の代理店を営み積極的に展開しています。もちろん、目的としては先程の砕石の需要が減っている中で、新たな市場の開拓というのがまずひとつあります。

石)商品名を教えていただけますか?

徳本)HySPEED(ハイスピード)工法っていう名称です。
メリットとしては、第一に、住まい手と環境に優しいという点です。セメントで地盤改良すると100%とは言えないんですけども、六価クロムという発がん性物質が発生する恐れがあるという点が、社会問題になっています。その上、地盤改良したその土地を転売する際に、地中に産廃(セメントの杭)があるということで土地の資産価値も下がってしまうというリスクがあると、今メディアで取り上げられています。しかし、住宅を購入されるエンドユーザーさんは、その事実を知らないことが多いのです。ビルダーさんやハウスメーカーさんは敢えて告知しませんから。第二のメリットとして、昨年3.11以降の震災の時に、千葉県、茨城県で液状化が起きてかなりの被害があった事は、記憶に新しいと思います。従来の工法であればなかなか液状化には対応できませんが、HySPEED工法は液状化に強いのです。昨年の震災のあと、HySPEED工法で施工した家はほとんど被害がなかったという事実がテレビ、新聞、雑誌等のメディアで大きく取り上げられています。

石)それはすごいね。

徳本)液状化対策というのが関東の方ではかなり深刻な問題になっていて、その液状化に強い唯一の工法だということで非常に注目されています。

石)次に、徳本常務が経営理念として大切にしていることを教えていただけますか。

徳本)弊社の目指す会社像として、「強い会社」、「楽しい会社」、「優しい会社」、という経営理念があります。強い会社というのは「シェア」「生産性」、「収益性」を追求できるような強い会社であると、優しい会社というのは環境に優しい、特に地場産業なので地域に対する貢献が必要であると、地域に優しい会社である、という部分があるんですけど、自分の中では「楽しい会社」という部分に最も力を入れていて、ヒト・モノ・カネという中で、どうしてもその中でモノもカネも動かすのはヒトであるというところで、人が一番重要な要素ではないかなという風に考えています。特に社員のやりがいの追求っていうところには重きを置いていますね。

石)やっぱり社員が活動しての事業やもんね。

徳本)以前、先生がお話しされていた印象深い一言で非常に共感した部分なのですが、「素晴らしい経営者は社員、働く者に生きる意味を感じさせることができる。仕事を通じて生きがいを感じさせる」というお話に、あぁそうだな、という風に思いました。

石)次に「社員に何を求めるのか」をお尋ねしたいと思います。社員に、「私は徳本砕石としては、社員にこうあってほしい」そういうものがあると思うんですけど、その為にはどういう風な取り組みをしているか教えていただけませんか。

徳本)社内で話することでいうと、会社は別にして、自分自身の人生設計を立てようと、言っています。例えば、50歳過ぎたらこうありたいとかっていう部分をまず立ててほしいなと、目的はなんでもいいんですけど、いい家住みたいとか、いい車乗りたいとか、で家族幸せにしたいとかっていうその人間の基本的な「欲求」を満たせるような目的を一つ持とうよと言っています。結局ハッピーになることなんですけど、その目的を達成する為のツールとして会社があればいいかなと、思っているんです。

石)会社を使ってみんなで幸せになろうということね。

徳本)そうですね。実際に会社の目標と自分の個人目標は直結しないと思うのです。まずは、自分の人生それが一番重要じゃないですか。その個人欲求が高い人間ほど、会社でも意識が高いという風には思いますね、一見別のように見えて。そういう人間に結局は大きい仕事を任せる。そして、任せられるということは人間として成長する、そして、そういう責任が課せられるということはもちろん会社からその対価は支払われるじゃないかっていうところでいうと最終的には個人的な目標・欲求に近づいていくっていう風に考えてるんです。

石)自分のことをまず考えて、と。

徳本)そういう風には考えてますね。で、余談な話なんですけどうちも最近二十代前半の若手が、入社しまして、面接した時に個人的に、なんか目標あるって聞いたときに、マイホームを建てたいと。「頑張れば、自分で家建てられるんですか?」とストレートに聞いてきたので、「それやったらそれ目標に頑張ろうよ」なんて。そこに目標置いて仕事一生懸命頑張って、普通にただ単に仕事する人間よりもそういう目的ある人間の方が、行動が変わってくるっていうのがあるので、実際入社後、まだ半年足らずなんですけど、先週日曜日に地鎮祭して、・・・

石)えっ何歳?

徳本)24歳です。

石)それまたすごいな。

徳本)そうなんですよ、で、思えば叶うっていうことなんで。

石)その方は、結婚してるの?

徳本)結婚してるんですよ。なかなか、そういうの見てて嬉しいですね。で、家建てて満足しちゃそれで終わりじゃないですか、また次新たな目標を見つけてそれに向かっていくっていうスタンスで頑張ってもらいたいなって思いますね。

石)次に片腕は大分育ってきましたか。

徳本)そうですね。

石)右腕、左腕とあるけど、それは3本も4本もあった方がそれはいいけど・・

徳本)まだまだ自分自身も含めてですけど、まだまだ成長過程というか、まぁ信じられるスタッフは増えてきましたね。

石)今、常務がやっている地盤改良事業の方向性、どういう動き方したらええのかっていう目標の共有化は浸透してきましたか。

徳本)そうですね。僕が恐れているのは会社から「やらされてる感」なんですよね。
なので課題設定は、しっかり自主的にしてもらっています。

石)重要なことやね。与えられたことをやるだけじゃ育たへんもんね。

徳本)そうですね。小さい目標でもいいんで。

石)じゃ、幹部、一般社員のモチベーションを上げるためにどんな取組をしていますか。

徳本)まず、モチベーションを上げるために事務所の一角を改造して、"目標施工件数"を掲げています。それとみんなで協力して目標を達成するんだという意識を高めるため、サッカーのように各社員の顔写真の下に、フォワードやディフェンダーなど遊び心も入れてチーム意識を高めています。フォワードは営業で、ディフェンダーは施工です。 また映像なども活用しています。

石)映像?

徳本)「HySpeed工法 十棟目までの軌跡」というタイトルで僕がホームビデオで作りました。
地盤改良事業は昨年の7月からやりかけて、十棟目まで現場を施工した時に、みんなで飲み会でもしようかって話になってたんで、自分の中ではサプライズで一棟目から十棟目までの現場の写真を音楽入れてよく結婚式の二次会とかの、それをやってみようかなと。

石)へぇストーリー風にね。

徳本)実際に現場で作業やってた本人達ってそれぞれ各現場に思い入れがあるんで、それを流したんですよ、居酒屋で・・・

石)へぇ

徳本)こういう風に一棟目から。あの時こうやったなとか、最初不安だらけで始めたことなんで。
((映像切替))

徳本)工期は決まってるじゃないですか、押し迫ってる中で、何がなんでも仕上げなあかん。でも予測できないトラブルが発生するときがあるんですよ。

石)プロジェクトエックスみたいや、これおもしろいなぁ。着工日までやらないと話にならへんもんね。

石)これ全部で何時間あるんですか。

徳本)十五分くらいですね。

石)へぇそうなんや。おもしろい、これみんな反応どうでした?

徳本)みんな泣いてましたね。仕事で泣けるってあまり無いと思うんですけど・・
で、これをDVDに焼いてみんなに持って帰らせたんですよ、家で家族と見ようやって。

石)ああ、知らんもんな家族は。

徳本)地盤改良事業部のメンバーは、割と家庭を持ってる若いスタッフが多いのですが、自分のパパが昼間どういう仕事してるかっていうの分からないじゃないですか。それを一緒に見て、パパの株を上げようやって。

石)いい取り組みやな。

徳本)で、この後すぐ子供ができた社員もいて(笑)。

石)(笑)。

徳本)見直されたというか。

石)なるほどこれはええわ、いい話やね。

徳本)ここだけだと地盤改良だけの話なんですけど、このスタッフっていうのがもともと砕石部門の本体から引っ張った人間なんですよ。

石)砕石場から来た人なんや。

徳本)これ忘れたらあかんやろっていうことで。で、裏方で砕石作るにあたって苦労してる人間がおるわけで、その映像も作りました。

石)これ全社的に取り組みやったらええよね。

徳本)それでこの前、全体会議の時に全社員の前でやったんですよ。((映像))

石)こりゃモチベーション上がるわ。徳本さんなかなかセンスあるねぇ。さすが広告代理店行ってただけあるなぁ。

徳本)広告代理店行ってた経験はこういうところ生きてきます(笑)。

石)では次行きたいと思います。徳本常務の尊敬している人物並びに座右の銘を教えてくれますか。

徳本)尊敬してる人物は、前の会社で下積みしてた時代に一緒に仕事しててお世話になった上司がいてたんですよ。今は、ある会社の社長になられてるんですけど。かなり影響を受けて今の自分自身の骨格を作ってもらったといっても過言じゃないくらいものすごい影響受けて、そもそも自分のスイッチをオンしてくれた人なんです。

石)すごいね。

徳本)それが、自分自身の考え方の部分ではひとつの柱になってますね。

石)そうですか。あと座右の銘は?

徳本)「逃げればピンチ、挑めばチャンス」です。ピンチってみんな嫌がるじゃないですか、逃げるじゃないですか、それを敢えて向かって行って乗り越えれたら成長すると思うんです。

石)なるほど。最後の質問になりますが、企業規模はどこまで成長させたいですか。

徳本)事業規模というより長く続く企業でありたいと考えています。100年以上続く企業にしたいです。来年で創業60周年なんで、今自分が30歳なんで、40足しても70歳ですか。

石)まだ十分社長できるね。

徳本)創業100年記念を仕切ってみたいです。

石)それいいね。。

徳本)あとは奈良県内における企業価値ですか、そこは高めたいなと、売上とともに中身含めて、事業特性上、地場産業であるんで地域に根付いた会社ということで、あとは既存事業に何か付加価値を付けて新たなマーケットを作っていきたいなと。今回HySpeed工法の地盤改良もその形になっているので。そういう形で、広げるところは広げたいなと考えていますね。

石)最後にビジネス計数塾についてのご意見頂ければ嬉しいんですけど。

徳本)そうですね、思いを形にするのが計数であると考えています。まだまだレベルの低いところの話なんですけど、先々考えていくとしっかり数字も使った計数的な目標の設定方法のノウハウを取り入れたいと思っていて、しかし、他では、なかなか勉強できないところではあるんで、そこは大いに勉強させて頂きたいな、というところと、同世代の経営者の方々が多くいらっしゃるので、そこでいろんな交流する場を頂けるのでそこで自分も気づかされるところがかなりあるんで、ともに成長していきたいなという思いで参加させて頂いてます。

石)ありがとうございました。

聞き手 パワーザイム株式会社
代表取締役 石光仁

一覧へ戻る

ページの先頭へ戻る