企業家の肖像

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"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

今回は、クリーニング業大手の株式会社フランス屋本部 代表取締役 長谷川幸則氏をお迎えいたしました。長谷川氏は、宅配クリーニングや無人店舗等、業界に新風を積極的に送っていますが、経営の基本ポリシーや人生観をインタビューしました。乞う、ご期待ください。

第13回 株式会社フランス屋本部 代表取締役 長谷川 幸則

〒596-0011
大阪府岸和田市木材町1-4
http://www.franceya.co.jp/

石)今日は、ひとつ、よろしくお願いします。
まず、最初の質問なんですけれども、なぜ、会社を継ぐ決意をされたのですか?
大体多くの方のご回答と言うのが、それが当然と言う方が多いんですけど。

長谷川)はい!同じです。

石)「なんとなく俺が継がなあかんやろー」という感じの方が多いんですね。長谷川さんはご長男じゃ無いですよね?

長谷川)僕は次男ですけど、兄がタクシーの仕事をすでにスタートしていましたし…
元々、本家の仕事は、タクシーの会社なんですが、父が養子に入って、始めた仕事がクリーニングなんですよ。

石)小さい時から、お兄ちゃんはタクシーを継ぐのが決まっていて、長谷川さん自身は、クリーニングを引き継ぐという雰囲気があったんですね。

長谷川)恐らく、そうなんではないかなぁという感じはありましたね。

石)なるほど、特に抵抗は無かった感じですか?

長谷川)そうですね、きっかけになった事があるんです。僕も働き出して一年ちょっと位でしたけど、デパートで働いていまして…

石)社会人の第一歩はデパートなんですね。どちらのデパートで?

長谷川)東武百貨店です。

石)東京でお勤めだったんですか。

長谷川)はい、そうなんですよ。池袋におりまして…

石)何年勤められたんですか?

長谷川)一年ちょっとは勤めましたかね。

石)売り場はどちらですか?

長谷川)紳士服の売り場で。

石)最初からお勉強と言う事で行かれたのですか?

長谷川)いや~、暗黙の了解はあったかもしれないけれども、その勉強期間も果たして、5年なのか10年なのかはっきりしなかったんですね。
1年でやめたきっかけは、実は94年に出来た関西空港なんですよ。
地元の関西空港の景気で儲けようと。だから帰ってこいという感じですね(笑)

石)確かにオープンの時は凄い地元フィーバーでしたよね。(笑)

長谷川)まぁ、その時に「このタイミングでよかったら戻って来ないか?」と…

石)お父さんが声を掛けられて?

長谷川)どちらかと言えば兄貴とか当時の専務が「今新しい事がスタートしています、若い世代も入れ替わって新しい人が来ています。このタイミングでぜひ一緒にやりたいです。」と言う話になって、僕も別に抵抗する必要性も無く。

石)それは、クリーニング事業だけじゃなくて色んな事を計画されていたからですか?

長谷川)そうですね、その時はダスキンの代理店もやっていました。それが新しい事業としてスタートしたんで、関空の中で他にも色んな事業を展開したいと思っていました。

石)なるほど!分かりました。それがきっかけで事業を継がれて、現在にいたっているのですね。何歳から社長になられたのですか?

長谷川)31になる前だったと思います。

石)僕の知っている限りでは、二代目で31の社長ってめちゃくちゃ早いですわ(笑)。

長谷川)(笑)そうですか。

石)よく干支三回りと言いまして、36で社長と言うのは早い方なんですよ。逆にお父さんは社長を譲られた後、何かまた別の事業をやられたのですか?

長谷川)まぁ、会長職で居てましたのでね。色々事業をやるのが好きなんで…

石)一線を引かれていて、会長と言う名の元で実質社長をやられてる感じだったのですか?

長谷川)いいえ、殆んど任せっぱなしの状態でしたね。最初の一年位は色んな事がありましたけど。

石)引き継いだりしますもんね。

長谷川)組織化されていましたし、会社も設立30年で右肩上がりになっている時でしたので、そうアドバイスをする事も無かったんだと思います。

石)不安な事は無かったですか?社長となればプレッシャーもあるでしょう。

長谷川)そうですね。

石)借入もあるでしょうし、従業員も居てますし。

長谷川)その時はあんまり無かったですね、寧ろ今の方がプレッシャーあります(笑)その時は多分若すぎてあんまりそう言う感覚も無かったんだと思います(笑)

石)会社に戻られたのが24か25位ですかね。

長谷川)そうですね、26位だと思います。

石)5年間工場や営業所を見られて31で社長に。そういう流れですよね。

長谷川)うちの親父も「60過ぎてくると世の中の動きとかも読み取りにくい」、「若い感性に任した方が良いやろ」という事は常々言ってますね。
今75ですけれども、この年齢になったら流石に感覚がずれて中々新しい事もようせんなぁと言うてますけど。

石)分かりました。では、2番目の質問なんですが、現在の事業のサービス内容と特色はなんですか?

長谷川)はい、うちは大阪、和歌山、兵庫、フランチャイズが奈良に一部ありますけど、近畿でチェーン店を開かせてもらってますね。

石)全部で何店舗くらいあります?取次店も合わせると。

長谷川)今、だいたい350くらいですかね。

石)それは…一大勢力ですねぇ。

長谷川)特色としては、そうですね、品質には気を使って、重視してやってきているんですが、他社がどんどん値下げしていってるのにうちは値段を変えてなかったんで、結果的にちょっと高めになってしまいましたね。

石)なるほど、品質重視ですか。

長谷川)はい、その分、染み抜きとかそういったものには力を入れさせてもらっていますし、Yシャツの白さへのこだわりっていうのはすごくありまして、そこはかなりこだわってやっていますね。

石)そうなんですね。最近の取り組みとしては何があります?

長谷川)インターネットでの取り組みですね、それまで近くのクリーニングショップに行かなきゃならなかったのが、なかなか時間の取れない方が多いので、新しいお客さんの拡大にはつながっています。

石)確かに、単身所帯も多くなってきていますもんね。それにまぁ、最近は男性だけじゃなくて女性も忙しい時代ですし、それをそういう形で出来るのは助かりますよね。
確か、日時の指定も出来るんでしたよね?

長谷川)どうしても宅急便なんで、配達にかかる時間は見てもらうんですけど。

石)だいたいどのくらいなんですか?

長谷川)そうですね、コートとか冬物の服とか、そういうのはお客さんもお急ぎではないので5日とか一週間でお返ししています。

石)それくらいなら十分ですよね、なるほど…。それとまた、無人店舗をつくっているというのも特徴ですよね?

長谷川)はい、季節によっては店舗自体の生産性が悪くなってしまうので…。これをなんとか出来ないかという中で新しい取り組みとしてやっています。
やっぱり人件費が固定費の中では大きいなと。

石)確かに、そうですよねぇ。有人店舗に加えて無人店舗。それから、インターネットによる注文も受け付けているというのが特徴ですね、なるほど。
では、次の質問なんですが、経営理念ですね、社員さんにも朝礼とかでいわれること多いと思うんですけど、どうでしょう?

長谷川)そうですね、これはまぁ、先代からの流れで同じなんですけど、クリーニング業はサービス業ですのでお客様が望んでいることをできるだけ具体化して出来るだけのサービスをしたいと思ってますね。だからまぁ、よく言われるお客様満足の向上っていうのは常に、僕が会社に入ったときから続けていることです。預かったものをクリーニングして返せばいいやってなりがちなんですが、やっぱり、その先にあるお客様の満足っていうのをどれだけ拾えるかっていうのはすごく大事にしています。

石)なるほど、そういうのって大事ですよね。

長谷川)はい。皆さんクリーニング屋さんにいかれて、ああしてください、こうしてくださいっていう要望があるとは思うんですけど、案外、言葉に出さない願望っていうのもあると 思うんです。

石)あぁ、あると思いますね。気づいてないけど、言われたら滅茶苦茶いいサービスやなっていうこととか。

長谷川)そうですね、それをまぁ、店舗に立つ人も工場の人もお客様の立場に立って考えて、お客様自身気づいてないような綻びがあれば直してお返しするだとか、言葉にされない願望にもお答えできるよう努力し続けようっていうのはいつも言い続けていることですね。
それで、それが結果的に今の品質を作り上げた基礎になっているのかもしれないですね。出来ませんっていってしまうと、それで多分終わっていたと思うんですけど、それをやっていこうと。それが他店との違いになっていってるんじゃないかなぁ、と思います。

石)なるほど、はい、ありがとうございました。では次の質問ですが、業界の現状と今後、見通しですね。
今、宅配クリーニングで新しい勢力が出てきていて、お客様も忙しい時代になってきている、そういう中でどういう風な見通し、業界はこういう風に変わっていくのではというのはありますか?

長谷川)そうですね、よく言われるのは、バブル期に9000億あった市場が今は半分以下に減っているっていうのはありますね。

石)そんなに減ってるんですか!?

長谷川)大体、4000億強って言われています。繊維がどんどん変わって、洋服がカジュアル化したり、家庭で洗えるっていうのが出てきたりでクリーニングの需要が減ってきたのが原因ではあると思います。
以前はクリーニングに出すものがご家庭にたくさんあって、毎月行くっていうのが普通だったんですけど、今はどっちかというと季節商売になりつつあるんです。衣替えの時だけとか。そうするとお客さんを増やすために駅だとか、人が多いところにお店を出していきたいんですが、それにはどうしても固定費がかかってしまう。

石)人の流れも変わってきてますし、その中でインターネットでの受注もある。そうした中でどういう戦略をとっていきますか?

長谷川)インターネットも伸びきてはいるんですが、ゆったりなところもありますんで無人店舗に力を入れていきたいと思っています。
当然、既存店舗の活性化も必要になりますんで店舗の場所を移すとか、それから、お店も古くなってきているので、改装することで新規顧客を取り込むだとか。そういった展開も考えています。

石)なるほど。

長谷川)後は、顧客分析をもっとしっかりしていく必要があると思っています。色々分析していると上位30パーセントの人達で8割の売り上げを維持しているんですね。この方々は多分うちのファンの人なんですね(笑)
で、残りの2割の人なんですけど、ここの人たちの活性化をしていきたいな、と。
それから、クリーニング業だけではいけないなとも思っています。ただクリーニング業をやるだけじゃなくて例えば、ハンガーを売るだとか、色々なサービスをしていく必要があると思います。

石)はい、分かりました。では、次の質問ですが、人材教育についてなんですが、どうでしょうか?

長谷川)今、具体的なところで何をやっているかというと、技術的な継承であったり、接客に関するセミナーとかですね。
現場でいかせるようなものを重視しています。技術については社内で簡単な検定もやっていて初級、中級、上級で分けたりしています。

石)社内でですか?

長谷川)そうです。だいたいの方は中級までは合格していますけどね。あとはまぁ、年に1回か2回コンテストなんかもやってますね。

石)なるほど。営業のほうではどうですか?

長谷川)そっちはなかなか難しいですね。

石)やっぱり店舗数が多いと大変ですよねぇ。

長谷川)ただ、年2回集まってもらって、会社の方針みたいなのを指導はさせてもらっています。主に、直営店ですけど。

石)そうなんですね、今の話と少し関連するんですが、社員の方のモチベーションを上げるための取り組みって何をされていますか?

長谷川)それは、いろいろ考えてみたんですが、あんまり無いな、と(笑)

石)そうなんですか(笑)

長谷川)社員自体は25名くらいでそれほど多くないんで普段から状況把握するようにはしているんですが、特にモチベーションを上げる取り組みっていうと…
旅行に行ったりとか、あとは業績に合わせて賞与とか、普通ですね。

石)なるほど。ほかの会社の話ですが、楽しい雰囲気を作り出すっていうのは大事かもしれないですね。みんなで支えあうっていう空気にして、みんなでがんばるってところはやっぱり強いですよ。
でも、確かに工場だと難しいかもですね(笑)
では8番目の質問ですが、尊敬してらっしゃる方はいますか?案外ね、父親を尊敬していると答えられる方が多いんですが(笑)

長谷川)そうですね、色んな会に入らせてもらってるんでいろいろ話を聞いてすごいなと思うことはいっぱいありますし、それに影響を受けることも多いですね。

石)なるほど。最近経営界では「TTP」っていうのがはやってるんですよ。
「徹底的にパクる」(笑)色んな所で勉強してどんどん吸収するのはいいと思いますね。

長谷川)はい。身近でも尊敬する人はたくさんいますね。

石)分かりました。では、次ですが、今後の目標、夢をお聞かせください。

長谷川)とりあえずの目標としてはインターネットによる販路の拡大や無人店舗の普及ですかね。これでなんとか今の時代の人々に「それ便利でいいよね」って言われるようなことをしていきたいと思っています。
新規でお客さんを増やすのは難しいですが、今利用しているお客さんにはいいなと思っていただきたいですね。

石)個人のほうはどうです?ゴルフとか。

長谷川)そうですね、ゴルフもそうですが、今、マラソンをやっていて、4時間を切りたいなと思っています。

石)4時間ですか!?すごいですね、なかなかいませんよね。今どのくらいなんですか?

長谷川)4時間半くらいですね。毎日コツコツやるのがいいみたいです。

石)はー、すごいですね!では10番目の質問なんですが、うちの研修についてご感想いただけますか?

長谷川)はい。今まで固定費を減らすことばかり考えていたんですが、減らすばかりではなく、いかに活かしていくかというのを勉強させていただいて、そこに経営の極意があるのかなとは思いましたね(笑)

石)ありがとうございます(笑)最後に、社長にとって経営とはなんですか?

長谷川)僕は2代目ですので、時には業績の悪い時もありますが、基本的には会社の価値を上げていくっていうのが仕事だと思っています。

石)経営とは会社の価値を上げていくということ、なるほど、今日はありがとうございました!

聞き手 パワーザイム株式会社
代表取締役 石光仁

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