企業家の肖像

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"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

今回は、バルブ製品の製造卸業を営んでいる株式会社一ノ瀬の常務取締役 一瀬 知史氏をお迎えいたしました。一瀬氏は、昨年ご結婚され、おめでたい人生の門出をスタートされたばかりです。また、一瀬氏は、芸大卒という異色の経歴の持ち主であり、企業メセナとして、楽団を株式会社で立ち上げられるなど、早くも異彩を放っておられます。そんな一瀬氏に経営の基本ポリシーや人生観をインタビューしました。乞う、ご期待ください。

第14回 株式会社一ノ瀬 常務取締役 一瀬 知史

〒550-0012
大阪市西区立売堀4-7-6
http://www.insins.co.jp/

石)今日はよろしくお願いします!
早速ですが、一瀬さん、学校は大阪芸大でしたよね?普通は学校の先生になられる方が多いと思うのですが、どうなのでしょう?

一瀬)そうですね。だいたい1/3は教師ですが、他の道は、フリーランスとして過ごし、プロを目指しながらバイト生活する人が多いですね。私自身もそういう道を選びました。

石)なるほど。その中で家業を継がれる人っていうのはレアじゃないですか?

一瀬)かなりレアだと思いますね。うちの学科では30人中2人、僕ともう一人だったと思います。

石)それはお父さんも喜ばれたでしょうね。今、3代目でしたか?

一瀬)そうですね。私で3代目になります。

石)よくアートの道から一大決心しましたね。最初はやっぱり音楽教師とプロを目指されていたのですか?

一瀬)そうですね、卒業して2年間はフリーランスとしてやっていました。

石)卒業してすぐ会社に入ったわけではないのですか?

一瀬)はい。2年間はプロを目指すために、オーケストラのエキストラとしてお金を貰っていました。それでまぁ、年収100万位で、一人で過ごす分にはやっていけていました。

石)なるほど…。そもそもの話ですけれども、アートの道に進むことを、お父さんは反対されなかったのですか?

一瀬)はい、何も言われませんでした。最悪、僕が会社に入って来ないことを想定していたと思います。

石)そうなのですねぇ。それで、どうして引き継ごうと思われたのですか?

一瀬)フリーランスとしてやって行く中でオーディションも色々受けたのですが、中々結果が出なくて…。挫折しかけていたところで、今までずっと黙認してくれていた父に、恩返しをしようと思い、会社を継ごうと…!

石)なるほど、親孝行の一環やったわけですね。

一瀬)最初は葛藤も色々ありました。僕よりも能力がある人達が会社にはいて、その人達が会社の経営を担っていった方がいいのじゃないかと、会社に入る前まで思っていました。でも入ってみてから、よく言う「敷かれたレールの上を走る」のとは違うと分かりました。確かに、すぐ後ろまではレールがあるけど、前にはなかった。(笑)

石)そうですね、2代目、3代目には新しく会社を起こすのとはまた違った苦労がありますよね。

一瀬)でも、自分でレールを敷かないといけない、自分で勉強して行かなければ行けないのは、遣り甲斐にもなりました。

石)分かりました。一瀬さんの会社はバルブの製造業でしたね。僕達にはあまり馴染みがないところですが、事業の特徴等教えて頂けますか?

一瀬)はい。私たちの会社は、バルブの製造と流通をやっているのですが、この両方をやっている会社は意外と少ないのですね。製造は、いわゆるメーカーの部分ですが、そちらはお客様から専門的なことを聞かれることが多いのですね。方や、卸・商社は、色々と聞かれるので、広く知識を求められます。お客様からすると、メーカーと付き合ってると、どうしてもそのメーカー以外の選択肢が取りづらくなってしまう。商社と付き合っても、今度は専門的な話ができなくて、商社がメーカーに丸投げしている状態になってしまう。そうした時に、我々は両方に対応できるというのが強みです。

石)なるほど。始まりはメーカーですか?商社ですか?

一瀬)始まりはメーカーですね。それで、自分のところでバルブを作って売るという。

石)普通の商社では対応できないような専門的な内容にも、自らがメーカーを持つことによって対応出来る様にしているということですね。

一瀬)はい。役割分担は少し分かれますが、扱う商品は同じなのでフォローできる形です。

石)分かりました。ちなみに従業員は何人いらっしゃるのですか?

一瀬)自社社員74名、グループ会社13名、海外子会社に2名在籍しています。

石)設立は何年でしょう?3代目だと戦後くらいでしょうか?

一瀬)設立は1949年8月ですね。創業が1944年5月です。

石)有難うございました。では、次の質問ですが、企業理念はなんでしょう?

一瀬)私が常々思っているのは、大きい会社を目指すべきではない、ということですね。
小さくても福利厚生がしっかりしていたり、残業がなかったりするほうが大事かな、と考えています。

石)ブラックが多いですからね。(笑)

一瀬)そうですね(笑)規模よりも、社員にとって働きやすい職場というのを重視しています。父も良く言っているのは「会社で働く時間は人生の1/3しかない。残りの2/3を大切にしなさい。」

石)その年代ならではのセリフですね。(笑)転勤が多くて破綻する家族も多かった。それを踏まえて、家族の関係性を大切にしているということなのですね。

一瀬)はい、上場企業のように数字を追い求めるのではなく、『ちょっと』黒字を目指すように心がけています。

石)大きい会社になればなる程、そうなりがちですもんね。小さくても、いい会社を目指す。分かりました。では、次ですが業界の現状と今後に関して、どのようにお考えですか?

一瀬)業界の動向として今言われているのは、インターネットショッピングの台頭っていうのは見逃せないですね。インターネット販売の市場拡大には目を見張るものがあります。やはりお客様からすると便利ですし、汎用品ならそれで事足りますから…

石)なるほど。業界の大きな流れとして、汎用品は大手のインターネット販売が強いのですね。ちなみに汎用品は商品のどれくらいを占めているのですか?

一瀬)どこまでを汎用品というかにもよりますが、だいたい半分くらいですね。

石)半分ですか!そうすると影響は大きいですね。

一瀬)はい、やっぱり汎用品の価格競争ではメーカー同士での泥沼になってしまって、よくない。うちの会社だけでなく業界全体の問題ですが、それにどう対抗していくかが今後の課題です。その一つの対策として、先ほどのメーカーと商社、2つの側面を持つことの強みを生かせたらな、と考えています。

石)なるほど。技術力のある商社をアピールしていくことで、アフターサービスも、きちんと出来るというのを売りに、活路を開いてくということですね。 次に、人材教育についてです。どういった活動をされていますか?

一瀬)そうですね。正直、今の社員の育成の仕方というのはOJTになっているのですが、OJTのままでいいのかというのもありまして、今は丁度過渡期、これといった方針を見いだせていない状態ですね。このままではよくないとは分かっているのですけど、模索中です。

石)なるほど…。OJTって、極端にいえば、「俺の背中についてこい!」みたいな感じですもんね(笑)それも重要ですが、OJTで終わるのではなく、他のフォローなんかも充実させた進化型OJTを目指していくのが大切ですね。

一瀬)そうですね、頑張っていきます。

石)わかりました。次、社員のモチベーションをあげる為にやっていることですが、どんなことがありますか?

一瀬)そうですね。2年に1回は必ず慰安旅行に行っています。

石)参加率はどうです?最近はいかない人も多くなっているそうですけど…

一瀬)80%はこえていますね!!

石)高いですね!最近は仕事とプライベートを分けて欲しいと考える人が多いですね。
特に20代とか。

一瀬)その辺は幸いなことに大丈夫でした。

石)いい雰囲気なのですね!何か注意していることなどあるのですか?

一瀬)そうですね、なるべく同期の人を1人か2人は採用するようにしています。
1人では、やりづらいと思いますから、励ましあっていけるように…

石)なるほど、工夫してらっしゃるのですね。
次ですが、尊敬する方はいらっしゃいますか?

一瀬)そうですね。身近なところでは父ですが、僕の音楽師匠ですね。音楽がすごく上手で、プロの中でも上手ですけど、すごく腰が低いです。謙虚で、奢らない性格の人は敵を作らない。高慢な人はよくないですね。威張り散らしているような人にはなりたくないなと思います。

石)そうですね。その心がけっていうのは大事だと思います。では、今後の夢・目標は何ですか?

一瀬)去年の11月に土地を購入し、スタジオを建設しています。「楽団を持ちたいな」と考えまして、自分が儲けるというよりは、自分のアイデンティティを育ててくれた音楽業界に恩返しをしたいという気持ちです。なので、今は楽団の事業とスタジオの経営、この2つをやることで少しでも報えたらなと思っています。

石)それは今のところ"一ノ瀬"のビジネスとの関連性は無いのですか?

一瀬)そうですね、今のところは無いです。無いですが、僕のやることなので、将来的なビジョンは"一ノ瀬"という会社の広報的な役割も担えたらと考えています。最終的に両方が大きくなってきたら「企業メセナ」的、観点でやっていきたいなと思っています。

石)なるほど、将来的にはシンボル的なものにしていきたいということですね。
分かりました。では、うちの幹部研修についてのご感想をお聞かせください。

一瀬)はい、研修を受けるまでは、考え方の共有をいかにして図るかを考えていたのですが、研修を受講して貰うことで40代の、次代の"一ノ瀬"を担っていく人達の意識改革のきっかけになったと思います。実際、研修の中で見つかった問題点もミーティングで話合いをする様になって、どういう風にしていくべきかを考える様になりました。

石)有難うございます。
では、最後に、一瀬さんの思う経営とは何かをお聞きして終わります。

一瀬)はい。経営とは、私も含めてまだまだわかっていない、一つの道だと思っています。『後ろまで来ているレール』をどこに伸ばしていくのは、私自身の仕事だと思っています。レールに乗ってくる電車の方々、社員も含めて幸せにして行く様なレールの敷き方を目指して行くことだと考えています。

石)経営とはみんなが幸せになれるレールを敷いていく事ですね。
なるほど、今日は有難うございました。

聞き手 パワーザイム株式会社
代表取締役 石光仁

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