企業家の肖像

HOME > 企業家の肖像 > 第15回 株式会社 ゼンショウ 代表取締役 井阪 和仁

"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

今回は北新地を中心に焼肉店を展開されている異色の若手経営者、井阪氏をお迎えし、インタビューさせていただくことになりました。フランチャイズ1店舗を含めて計6店舗を経営されている井阪氏ですが、 初めから飲食業をやっていた訳ではなかったとの事です。その波乱万丈の経歴を伺い、思わず身を乗り出して突っ込んだ質問をさせて頂きました。 どうぞご期待ください。

第15回 株式会社 ゼンショウ 代表取締役 井阪 和仁

〒550-0002
大阪市西区江戸堀1丁目14番4号
http://www.zensho.jp/

石)本日は、よろしくお願いします!
最初の質問ですが、現在焼肉屋を事業としてされていますが、きっかけは何ですか?

井阪)元々僕は、大学で土木を学んで、卒業してから就職したのは土木会社でした。

石)初めは飲食ではなく土木だったのですか?

井阪)はい、大阪市福島にある会社に就職し、現場監督をやっていたのですが、物を作るという意味では凄く楽しくて、自分の作った物が残るのは格別の喜びでした。
コンクリートで50年、長ければ70年くらいは残るので…

石)なるほど。何をされていたのですか?

井阪)山の斜面に防護ネットを張ったり、崩れないように固めたりする仕事でした。

石)和歌山とか奈良とか?

井阪)そうですね、他にも島根、九州と全国を飛び回っていました。
僕の親父位の歳の人達に指示を出したり、それはいい経験になりました。

石)なるほど。そこからどうして飲食へ?

井阪)元々土木に入ったのは、何か形を残せると言う所に魅力を感じたのですけれど、基本的には人と接さない仕事なので、僕は大学の頃から人と接する仕事に興味があって、飲食もそうですけど、いつかはやってみたいと言うのがありましたね。

石)そうですか、土木を辞めた理由とかあるのですか?

井阪)土木を初めて2年目位で、なんとなく仕事も分かってきた頃だったのですけど、現場監督は言ってみれば店長さんで、上にはマネージャーさんもいるし、下にもしっかりした人がいて、僕はいなくてもいいんじゃないかと思っていましたね。

石)あまりやりがいがなかった?

井阪)はい、待遇は凄く良かったのですけど、車も支給で…!!
でも逆にこれでいいのかなと思って。

石)車が支給っていうのは凄いですね。それで、どうされたのですか?

井阪)測量の資格を持っていたので、その会社を辞めて、測量の会社に入ったのです。

石)直ぐ、飲食店に行かれた訳ではないのですね。

井阪)はい、元々独立したいという気持ちが強くあり、自分が勉強してきたのは土木なので、その経験を生かそうと思いまして。
土木で独立するのは難しいけれど、測量なら…と思ったのですが、測量の会社に入っても、そもそも仕事が全然なく、不動産屋に飛び込みで3000件位回って営業し、「測量士が営業もやるのか」て、驚かれたりしましたね。(笑)

石)測量士での独立も難しいと…?

井阪)僕の勤めていた会社の先生は、京大出身のすごい先生で、その先生ですら苦労しているのに僕がやっていけるのかなと思いました。
実はその時、測量士の仕事もやりながら焼鳥屋さんでバイトしていたのです。

石)昼は営業し、夜はバイトしていたのですか、ハードですねぇ!!

井阪)営業をしても、仕事を貰えたのは1%で、一番しんどい時でした。(笑)
そんな時、バイトをしていた焼鳥屋さんが2号店を出す事が決まり、それを機会に、測量の会社を辞めて、飲食店で雇って貰う事にしたのです。

石)なるほど!
仕事が急に変わる事には抵抗はなかったのですか?

井阪)元々、お店でバイトしてた事もあり、人と接する事が好きなのですぐに馴染みましたね。
店長として雇って頂いたのです。
社長さんが「好きな様にやっていいよ」て、任せてくれたのです。それで、焼鳥屋さん2店舗と、お弁当屋さん1店舗の立ち上げをやらせて貰えて、売上を伸ばす事が出来て、すごくいい経験が出来ました。

石)そうですか。そこからどうやって独立に?

井阪)実は、社長の夢に、焼肉屋さんをやりたいって言うのがあったのです。
それで店を出す事になり、牛肉の扱いは誰も出来なかったので外部業者に任せて、接客は僕がやると言う事になりましたが、なかなか上手くいかなかった!!
味なのか?場所なのか?値段なのか?何かは分かりませんが、経営が難しい状態になったのです。それで、潰そうかという話になったのですが、その前に半年だけ僕が店長をやる事になりました。
色々と他店を見に行ったり、勉強をしたりしたのですが、中々思うような売上を上げる事は出来ませんでした。

石)なかなか厳しい状態ですね。(笑)

井阪)でもそこから、徐々に売り上げも伸びてきていたのです。だから、「つぶす位ならこの店を売ってくれませんか?」と社長に頼んだのが、始まりでした。

石)なるほど。最初は結構苦労されたのでは?

井阪)そうですね。初めは自分が入って働くことも多かったですし、大変でしたけど、家族が協力してくれたおかげもあって、なんとかやれました。

石)それでついに、持っていた独立の夢が叶ったわけですね。なるほど!
焼き鳥ではなく焼肉で独立しようと思ったのは何か理由があるのですか?

井阪)やっぱり、焼肉と寿司といえば、高い料理のイメージがあるじゃないですか。
お客様の牛肉に対しての思いは絶大だと実感していたので、将来性を見越して焼肉にしました。

石)わかりました。では次の質問ですが、現在の事業のサービス内容と特色を教えてください。まず5店舗でどれくらいの来店客数がありますか?

井阪)そうですね、年間だいたい10万人くらいですかね。

石)すごいなぁ!繁盛店ですね。それだけ人が来てくれる魅力は何だと思いますか?

井阪)安いのに良い肉、これに尽きると思います。

石)すごく安くされていますもんね。
思うのですけど、他店もやろうと思えば出来るだろうにどうしてやらないのですかね?

井阪)例えば、“ヘレ肉”は高いイメージがあるじゃないですか。
そう言うお肉に利益を乗せて確定させていくのが主流のやりかたですね。
当店では、そこではあまり儲けずに、例えば、もやしやドリンクを売ることで利益を出して行く様にしたのです。

石)なるほど、固定観念を破ったわけですね。そこにお客さんも魅力を感じたというわけですか。

井阪)ドリンクのおかわりを聞いて回るだとか、サービス的な部分も重視しました。

石)プライスを下げて、回転で勝負するようにしていったということですね、分かりました。
では、経営理念、経営で大切にされている事は何がありますか?

井阪)まず、お客様を大事にする事、接客です。人と人との繋がりがすごく大きくて、はっきりと計ったわけではないですが、リピーター率8割位はあると思いますね。
今後も、お客様を大事にする部分は積極的に伸ばしていきたいと思っています。
お肉はどこでも食べられるし、当店のようなお店も少しずつ出来ています。他に他店にないのは、メニューの作り方であったり、注文の取り方であったりの部分だと思うので、お客様に合わせた接客をしていきたいっていうのが一点。
後は、従業員を育てていく事です。
思いを一緒にしていかないと、上手くお店が回らなくなるので、出来るだけコミュニケーションを取るようにして、かなり力を入れています。

石)接客と従業員の育成、基本のところをしっかりされているという事ですね。
では次ですが、業界の現状と今後をどのように見通されていますか?

井阪)そうですね、焼肉業界は昔からずっと長いことある業態ですけど、今は、タレで食べる焼肉から少しずつ熟成肉に変わったりと、やっぱり飽きが来るので、焼肉が無くなる事は無いでしょうけど、食べ方は変わっていくと思います。
後は、生産者が少しずつ減ってきているのですよね。
それに伴って和牛のブランド価値っていうのも少しずつ上がっています、コスト高にもなってきているのです。今後は供給ルートの確保もテーマかなと思います。

石)生産者の減少は逆風ですね。

井阪)はい、牛肉に関わるところ全部が盛り上がっていくように考えないといけないのかなと思います、なかなか難しいところですけど。

石)分かりました。では、今後の経営戦略をお聞かせください。

井阪)今、ほとんどお店に入店状態なので、経営戦略を考える余裕すらないですね。まず時間を作るために人材を育てないと、と思っています。

石)人材育成ですか?

井阪)はい。安定的に、各店舗で人を育てられるようにしていきたいと思っています。
飲食はブラックなイメージが付きがちで、働く人が働きやすい環境作りをしながら、店舗拡大を目指しています。
他にも、セントラル的な場所を作ってそこで仕込みを済ませる事でコストを抑える仕組みも作っていけたらなと考えています。

石)基本的には店舗数は増やしていきたいという事ですか?

井阪)はい。今後は兵庫や京都、東京など、エリアの違った部分にも出していきたいなと思っています。

石)なるほど、今は未来に備えて人材育成であったり、業務の合理化、環境づくりをメインで取組むと言う事ですね、分かりました。
では次ですね、人材教育について、どういう風にされていますか?

井阪)今の流れとしては、店長が従業員に教えて、アルバイト長が他のバイトに教えていく流れが作れているのです。
この流れを大事にしたいので、従業員はもちろん、アルバイト長ともしっかり面談しています。
よくあるのが、数字しか見ていない事ですね。
売り上げだけが伸びればいいというものではなく、僕らはお客さんの満足度もあげなくてはいけない。意識のすり合わせを大事にしています。

石)アルバイト長は面白いですね。
関連しているのですけど、社員のモチベーションを上げるために何をされていますか?

井阪)これは凄く難しいと思いました。(笑) 1番は、決算賞与です。

石)やっぱり効果ありますか?

井阪)はい。古い考えなのですけど、決算賞与は手渡しにしています。

石)手渡しですか(笑) 全員集めて一人ずつやるのですか?

井阪)そうです。「全部500円玉詰めたろかな」と思ったり。(笑)
表彰式みたいに演出しながらやりますね。

石)なるほど、分かりました。では、尊敬する人はいますか?

井阪)そうですね。僕は祖父ですね、僕には祖父が3人いるのですよ!

石)3人ですか?

井阪)はい。父方の祖父に兄弟がいまして、ただ、お子さんがいなかったのでその分かわいがってもらいました。
祖父の時代は戦争の時代で、かなり苦労したという話はよく聞かされました。

石)どういった部分を尊敬されているのですか?

井阪)祖父がよく言っていたのは、人を使うのは難しいということでした。
小さいながらに思ったのは、祖父が信頼されていたということですね。
色々な人とよくしゃべっていましたし、ゼロからスタートして成功した部分も含めて、尊敬しています。

石)なるほど、それが独立したいという気持ちのルーツなのかもしれませんね。
わかりました。では今後の目標、会社としてと、ご自身の夢の2つを教えてください。

井阪)会社としては、10店舗まではいきたいと思っています。
大阪で後2店舗と別のエリアに3店舗出せたらいいなと思っています。
それが直近の、5年位の目標ですね。
個人の目標としては、地元に戻って農業をやりながら、温泉を掘りたいなと。(笑)

石)地域への恩返し、という事ですね。(笑)
次に、弊社の幹部研修についてご感想お願いします。

井阪)そうですね、幹部と一緒に受けたので、意識としての植え付けが出来たのは、すごく大きかったと思います。
お互い共通の考え方を学ぶことで、話し方が楽になった部分もありました。

石)ありがとうございます、考え方が整理できるっていうのはポイントですね!
では最後に、井阪さんにとっての経営とは何ですか?

井阪)店を起こしてからいろんな人と付き合うようになって、社員を雇ったりしているうちに、本当は一店舗だけで儲けてもいいのですけど、人のために、関わった人の役に立ちたいと思えるようになりました。

石)なるほど、経営とは貢献である、今日は有難うございました。

聞き手 パワーザイム株式会社
代表取締役 石光仁

一覧へ戻る

ページの先頭へ戻る