企業家の肖像

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"企業家の肖像"は弊社ビジネススクールやコンサルティングを通して出会った優れた企業経営者に、その経営哲学や生き方の本音をインタビュー形式でお届けする企画です。

今回は、大阪の箕面市に本社を置く横田工業株式会社さんの三代目である横田和馬取締役営業本部長をお迎えしました。同社は保温保冷工事を通して工場の生産性をバックアップする地味ではありながら大事な役割を担っております。また、IoT技術を取り入れるなど新技術とりこみにも意欲的な会社さんです。

横田和馬氏にマネジメントをどのように考えておられるのか、フォーカスをあてていきたいと思います。

第18回 横田工業 株式会社 取締役 営業本部長 横田 和馬

〒562-0035
大阪府箕面市船場東3-11-6
http://www.yokotakogyo.co.jp/

石)本日はよろしくお願いいたします!

横田)よろしくお願いいたします。

石)まず、最初の質問です。横田さんが事業を引き継がれた理由は何ですか?将来が見えないことへの不安や雇用責任が伴う圧迫感から、事業を引き継がない人も増えてきている中でどうして引き継ごうと考えたのでしょうか?

横田)私は横田工業の3代目になります。小さいころから3代目として周りから意識されてきたというのが主な理由です。両親からも当然、次の経営者になるようにと育てられてきました。自分自身も漠然とですが、いずれは横田工業を引き継ぐものだと考えながら過ごしてきましたので、特に違和感なく事業を引き継ぐことができました。

石)お父さんが経営で苦しむ姿を見て継ぐことを嫌がる方も多いそうですが、そのようなことはなかったですか?

横田)父は、家では会社の話を一切しないタイプでした。会社が厳しかった時期もありましたが、そのような時でも会社経営で弱気な発言を一度も聞いたことがありませんでした。

石)気骨のある立派なお父さんですね。横田さん、ご兄弟は?

横田)姉が二人いますが、末っ子長男です。

石)なるほど。そうして自然と継ぐ流れになっていた訳ですね。現在の事業とサービスの内容と特色についてお聞かせください。

サイロへの保温施工

横田)当社の仕事は工場の中の断熱工事で、熱絶縁工事業と言われる建設業になります。極端に熱いものや冷たいものに対する断熱工事を得意としていて、特に繊維系の化学プラント会社に強いという特色を持っています。繊維系に集約していった時期もありましたが、昔の繊維(ポリマー)で使われていた技術が現在は膜の技術に生まれ変わり、今はフィルムやリチウムイオン電池の部品など新しい分野に古い技術で挑んでいるお客様が多くなっています。昔の仕事やお客様を大事にしながら、最新の技術に挑戦するお客様とも仕事をしております。また、業務自体は工場が稼働する上で決してなくなるものではない上に、基礎化成品を生産する工場に常駐したりもしていますので、おかげさまで景気に大きな影響は受けにくいです。

石)それは安心ですね。企業理念、経営理念または経営で大切にしていることは何でしょうか?

横田)我々は、機械でものづくりをするような会社ではありません。人と人が直接関わりあう業務で、売上には従業員の人間性も大きく影響すると考えているので人を大切にしています。工事業なので「安全」で「高品質」が大前提ではありますが、それを実現するためには素晴らしい人材の存在が必要不可欠です。利益が上がればきちんと還元しますし、従業員の意見もきちんと聞くようにしています。そういう意味で人を凄く重視していますね。

石)なるほど、大切な部分ですね。一般的には、人の確保が難しい、現場仕事を嫌がる等々、人の問題がボトルネックになってくるところですがそれについてもお聞かせください。

横田)人材に関してですが、弊社では大きく社員と協力業者さんの2つに分かれます。社員に関しては、今平均年齢が約35歳で若い人が多く成長段階にある、活気のある状態だと思っています。

石)35歳!?若いですねぇ

本社風景

横田)15年程前より、緩やかに世代交代をしていき、企業文化を保ちながら若い力が加わり、現在は良い環境です。また、協力業者さんは、古くからお付き合いをさせて頂いている職人さんの息子さんの代となり、技術を継承しつつ世代が若返っており施工品質を高く保てています。また、社員と職人の年齢も近い為、和気あいあいとした良い雰囲気で仕事を進めているのも当社の特徴です。

石)業界の現状と今後についてどのようにお考えでしょうか?

横田)我々の業界も長い目で見れば縮小傾向にあります。お客様の工場もどんどん環境が変わってきました。昔は多くの熱を使って化学合成繊維を作っていた工場が今や研究開発をするような研究棟であったり、小さく付加価値の高いものを作る工場に変わっていたりします。言い方はおかしいかもしれませんが、昔ながらの重厚長大の象徴のような工場から、清潔で手入れの行き届いた、いわばおしゃれな工場に様変わりするところが増えてきています。また、中国をはじめとする海外に工場が進出するケースも増えてきました。必然的に断熱工事の必要なところというのは少なくなってきていますし、縮小傾向にあるのは間違いないと思います。

石)なるほど。では今後どういう戦略をとっていくのか、経営戦略についてどうお考えでしょうか?

プラント夜景

横田)断熱工事が少なくなってきたのはここ数年の話ではなく、20~30年前からの流れなのである程度の対応ができています。縮小傾向にはありますが化学プラントなどは決してなくなることはない業界ではあるので、「工場の便利屋さん」という立ち位置をうまく活かしていきたいと思っています。 断熱工事にこだわらず、便利屋さんという立場を生かして何かできることはないのかなと探していくことが重要だと思っています。

石)便利屋さんですか?

横田)はい。例えば、配管から蒸気が漏れていたとして、原因を調べるためには、まずそこにある保温材を外さないといけない。なので、一番初めに呼ばれるのは私達です。工事の元請けになるケースは少ないですが、業務的には本筋の作業ではなくても常に工場に必要とされている。まさに便利屋さんですね。工場の中を知り尽くしていることも多いのでこれをビジネスチャンスと捉えています。

石)なるほど。具体的にはどうでしょうか?

横田)工場は1970年代に作られたものが多く設備の老朽化に伴う工場事故が多発しています。それに伴い設備の取り替えニーズが高まってきています。老朽化した設備は一箇所が悪ければ全体を取り換えるというのがお客様の基本的な考え方ですが、これは保温材がついているために外観からはどこの部分が悪いのかを特定し判断ができないからです。配管や機器の老朽化の診断ができれば、工場保全に一役買うことができます。取り換えが必要な個所を把握することが出来れば、全部を取り換えるより大幅にコストを削減することができます。

石)システム化出来たら面白いですね。工場の配管カルテみたいな。なるほど、工場管理のレベルが上がり、コストも削減できるいい考えですね。

横田)また、設備を可視化するなど、安価に情報インフラを整備できれば工場のお医者さんとして、お客様に喜んでいただける付加価値を高めるサービスになると考えています。工事を請け負いたいからではなく、工場の保全担当者の良きパートナーでありたい、お世話になっているお客様に恩返しがしたいという一心です。将来的にはIoTを活用してサービス品質を高めていくことで故障を事前に把握し、予知保全に役立てることができると考えています。これからのプラントメンテナンスの在り方を変えていきたいですね。

石)ハード面を強化することに限界が来ている中で、製造サービス業というか、サービスを強化することが今後のキーワードになりそうですね。では次ですが人材教育について教えてください。

横田)一番お金かけてもらっているのは私だと思います(笑)

石)それはそうでしょうね(笑)

横田)一方で社員の方にお金はあまりかけられていません。実務からOJTということになりがちなので、人を大事にしている会社としては人材教育にも計画的にお金をかけていきたいと思っています。それから、私自身が今までに学ばせていただいたことをいろいろな形で還元していきたいと思います。勉強会で得た知識を、自社業務の実態と照らし合わせ、自分たちの日常業務を例にとり紹介をし、聞き手が飽きない勉強会をして行きたいですね。

石)そうですね、いろいろ勉強された知識を体系化して幹部の方々がまたそれを部下に伝えていく、そういう形がいいと思います。社員のモチベーション維持のために取り組まれていることなどありますか?

60周年記念式典 琵琶湖クルーズの様子

横田)うちは今、55名の従業員に対して事業所が8つもあります。従業員が全国各地に散らばっている状態なので、企業として社員のモチベーション維持のための取り組みはなかなかできていないというのが現状です。創立60周年の時には琵琶湖で船を借りてパーティーをしたことがありましたが、今後もそういったイベントをしていきたいと思っています。

石)今後の目標、夢について教えてください。

横田)少しおかしいかもしれませんが、社長になることですね。偉大な父を超えられるような社長になりたいと思っています。

石)ありがとうございます。では次に、弊社の幹部研修についての感想をお願いします。

横田)色々な勉強会に参加して話を聞いているうちに、目が肥えてくるというか耳が肥えてきます(笑)そうすると、より面白い話を求めるわけですが、石先生の話は目から鱗でした。特に、企業をより魅力的なものにするために自社研究に数字を使おうという話は私も同じように考えていたので大変勉強になりました。幹部研修に限らずセミナーでの思想が一貫していたので、企業としての姿勢も学べる有意義な研修でした。

石)ありがとうございます!では最後に、横田さんにとって経営とはなんでしょうか?

横田)私自身がまだ経営者にはなっていないので難しいですが、「変わっていくこと」ですかね。今が悪いということではなく、チャレンジをしなければ負けてしまうという危機感があります。変えることには勇気が必要ですが、経営を通じて自分自身、そして会社が成長していければと思います。

石)一度形を作ってしまうと変わることはなかなか難しいですよね。経営とは変わっていくこと、今日はありがとうございました!

聞き手 パワーザイム株式会社
代表取締役 石光仁

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